マグネパワーズ研究第二回目ですが、まずは基本となるマグネパワーズ・レッドパワーズに登場する16人のミクロマン達について、玩具やら設定やら由来やらをいろいろと考察してみたいと思います。
マグネパワーズの玩具ラインは1999年に「小さな巨人 ミクロマン」としてアニメ放送されました。劇場公開までされ、非常に世間的な人気、認知度が高いのはご存知の通り。
しかしアニメで登場するのはアーサーら、ア行5人のミクロマンのみ。
以下、カ~タまでの残り11人については玩具付属の解説やコミックボンボンの誌面展開で僅かに情報が提供されるだけで、アニメ終了後の新シリーズ「レッドパワーズ」に至っては、ちょっと前までの私を含む多くのシロート達にとってそんな奴ら知らん。みたいな、言ってみりゃぁDIC時代のGIジョーのような暗黒大陸となっているわけです。
しかしマグネ・レッドの玩具にはメディアや文芸で語られる物語の他に、玩具そのものに隠された、全く別の世界が拡がっています。
まずは最初に登場したマグネパワーズミクロマンであり、最も有名なミクロマンと言える、ア行。
右からアーサー、イザム、ウォルト、エジソン、オーディーン。
玩具はシングルパックの単品売りでした。
※カッコ内は名前の元モチーフを記します。ソースはwikiより。
・アーサー
正義の人、アーサー。
シリーズ主役としてのメディア、関連商品への露出の多さ、ミクロ史上最多と思われる商品点数などなど、平成どころか過去現在未来、全てのミクロマンの中でも絶対エースと言える存在です。
人気、知名度ともに絶大ですが、後期になるとあまりにもアーサーに頼った商品展開が目立ち、またアーサーかよ!とファンにボヤかれる事態も起こります。
・イザム
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(ロックバンドSHAZNAのボーカリスト、IZAMより)孤高の美青年剣士。
アニメ初期では協調性に欠け、グループを割るような行動も目立ちました。
その気まぐれな立ち振る舞いときたら子供向けアニメとは思えない異常なエロスが発散されまくりでして、アーサーと共に当時の多くのいたいけな少女たちを腐女子道に目覚めさせたと思われる罪な奴です。
そんな彼のキャラクターには、往年の名作マンガ「風と木の歌」の悪魔的主人公にして「永遠の美少年」、ジルベール・コクトーが思い起こされます。
・ウォルト
水の力を操る。
体力担当の大喰い。親しみやすいアンちゃんで要するにアホ。
全体的に年齢層が高いア行チームの中ではホッとさせてくれる存在ですな。
ルックスはカッコいいけど立ち位置的にはキレンジャーです。
・エジソン
頭脳担当でメカの開発、強化や情報の収集、分析を主に行い、戦闘は苦手。
語尾に「であ~る」、「なのだ」と付ける。
こういうキャラは一般的にガッチャマンのリュウというかジリオンのデイブというか、活躍の少ない地味なキャラになるもんですが、丸尾スエ夫の声で喋るヘンな髪形のおっさんというムダに立つキャラのおかげで、アーサーやイザムとは逆の意味で強く記憶に残ってしまうキャラとなりました。
アニメの作画崩壊回ではとても見るに耐えない顔に。
・オーディーン
炎の力を操る
子供向けアニメとしてはビックリするほどのシブいおっさんであり、日サロで焼いたかのような金の掛かったテッカテカ黒フェイス、石鹸で洗髪してんのかと思わせるワイルドなヘアースタイルが当時の多くのいたいけな少女たちを以下略。
主な仕事はイザムを誘惑してその性感を開発する事であります。ウソであります。
この5人については平成シリーズを通しての核となる「おなじみの存在」で、説明不要と言ってもいいほどですが、玩具ついてはまだまだ大きな謎が秘められています。
平成ミクロは基本「アーメット」と呼ばれるフルフェイスマスク姿で造形されますが、アーサーは5人の中で唯一の顔出し造形。これは昭和ミクロマン時代のいわゆる「銀ヘッド」を継承してます。
ウォルトは鳥、オーデーンは豹をモチーフにしていますが、これは変身サイボーグ時代からトランスフォーマーまで続く、コンドル、ジャガー玩具の系譜を次いだ意匠と思われます。
このようにア行5人のうちの三人は、マグネパワーズが昭和ミクロマンの後継作である事を強く意識させるモチーフが盛り込まれているのです。
しかし、これは考えようによっては、マグネパワーズが持っていた一種の違和感を薄めようとする意図があったようにも受け取れます。
※以下ヤバい考察が続きますので、「純度」の高いファンの皆様は無視するか、以降読まなかった事にしといていただくと幸いです。
ミクロマン・マグネパワーズはニューミクロマン終了から数えて13年ぶりとなる復活であり、当時世代の子供たちに留まらず昭和世代のアニキ、おじさん連中からも大きな注目を集めた存在でしたが、平成の「新しいミクロマン」には賛否の両方がありました。
まず昭和の10cm(3.75in.)の体高に比べて平成版は8センチ(3in.)と小さくなり、強度確保のためか素体の可動箇所(手首、足首等)が減り、スタイルもシャープこの上無かった昭和に比べてぼってりしています。
簡単に言うと、ダッセェ。と思ったわけです。私は、アカン!と思った方のクチでした。
また、初期に発売されたマグネロボットマンが明らかに「ロボットマンのイメージ」とそぐわなかった事も、不評の大きな一因だったと思います。
ロボットマン TVCM
「平成のロボットマン」はどう見てもミクロマンというよりも「鋼鉄ジーグ」に始まるマグネモ11ライン、「マグネロボット」の系譜に繋がる商品です。
マグネロボットマン自体は異常なほどのコダワリが詰め込まれたトンデモ傑作シリーズだったのですが、「マグネモがいかん」という事ではなく、ロボットマンとはミクロマンファンにとっては特別中の特別な存在ですので、こんなんロボットマンじゃねーっ!と悶えてしまった訳なんです。
また、ミクロマン+マグネロボットという布陣は、むしろ海外展開のマイクロノーツの玩具構成であると言う事も前回の記事で指摘しました。
このような様々な「すれ違い」には、一体どんな意味があるって言うんでしょうか。
※もう充分にヤバいのですが、こっから先は本格的に危険です。
さて、ではマグネミクロマンがもともと「何として」作られたのか?という疑問なのですが、当時の玩具デザインを担当された方により、ゼンマインやチェンジトルーパーズが、なんとミクロマン以前に企画された別ラインからの転用玩具だった事が明かされています。
また出典は不明ですが、当時、あるトイホビー専門誌のメーカーインタビュー記事に、マグネロボットマンも別ラインからの転用玩具だったという証言が掲載されたという、衝撃的な話も聞きました。
意外や意外、マグネパワーズは満を持して練りに練られて登場した物だと思い込んでいましたが、実際には初期ラインナップは転用だらけという事になります。
謎を解く痕跡は、イザムとエジソンに残されていると私は考えます。
イザムはツッパリサングラスのような両側に大きく張り出したバイザー、エジソンはカマキリという、ちょっと不思議なモチーフですが、もしかするとその元ネタは、こんなところから引っ張られた物では無いのでしょうか。
コミック版マイクロノーツ、ACROYEAR(アクロイヤー2)と、BUG(ギャラクティックウォリアー)。
またもや出ましたマーベルマイクロノーツ。日本のファンからはそんなん知んねーんだよいいかげんにしろこの馬鹿!とか、タカラと全く関係無いだろ常考!とか言われそうです。
しかしマーベルのアクロイヤーは正義の剣士であり、誇り高き貴公子ですし、どう見たって「ショッカー怪人バッタ男」みたいなバグも、こう見えてスーパーミクロマン・ハンドバズーカの海外版、「ギャラクティック・ウォリアー」のコミック版の姿なのです。
マーベルコミックのマイクロノーツチームは玩具とは似ても似つかない姿をしてますが、これは権利上の様々な問題のせいらしいです。
コミックでのアクロイヤーとバグは仲良しの2人組で、ラン(玩具は海外版スーパーミクロマン・ダッシュウィングであるスペースグライダー)、マリ姫、バイオトロン(海外版ロボットマン)と合わせた5人でマイクロノーツ・オリジナルチームを構成しています。
バグはマイクロノーツの商標権が混沌とした後でも登場作品を変えてマーベルユニバースを渡り歩き、現在はガーディアン・オブ・ザ・ギャラクシーの第二期メンバーに編入されています。GOTGは2014年8月にマーベルの超大作映画として公開予定なので、もしかすると映画のどこかにバグも登場するかもしれませんね。
ま。版権の問題がクリアになってればの話なんですが。
どちらもミクロマン世界のキャラクターとして担ぎ出されるにはあまりにも誰得な異色のモチーフですが、ひょっとしてマグネパワーズは、最初マジでマイクロノーツとして作られていたんじゃないかと考えると、様々な違和感が解消されます。
まず、タカラはトランスフォーマーのヒット以降、国際市場ではハズブロの黒子であり続けました。
パワーレンジャーやガンダムWのバンダイ、ポケモンのトミーは国際市場でもメガヒットを飛ばした有名な存在ですが、マイクロノーツ、スターウォーズ、GIジョーARAHという、米玩具史どころか世界の玩具史の中に絶大な影響を与えたミクロマン、現在も続く世界的な大ヒットであるトランスフォーマー玩具を生み出したタカラが、海外では全く知られていないというのは、驚いた事に事実です。
※タカラトミーの海外法人名は"TOMY COMPANY, LTD. "と、TAKARAのTAの字もありません。タカラの海外での知名度が低かったからなんだそうです!
そんな情勢を打破すべく、90年代のタカラは海外で絶大な知名度を誇る「マイクロノーツ」を自社のブランドとして獲得し、国際市場に自ら討って出る事を画策していた形跡があります。
ところがタカラは"MICRONAUTS"のパテントを所持していませんでした。MEGO社が消滅した後、、マイクロノーツの商標権は様々な形で分散し、多くの会社がその所有権を巡って争い、長い間混沌としていたのです。
「マイクロノーツ」の看板がなければ、海外市場へのミクロマン進出は不可能です。例え"MICROMAN"ブランドで海外展開を行ったとしても、版権保持者が"MICRONAUTS"ブランドの玩具をヨソから出してしまえば、なんと"MICROMAN"が逆に訴えられ、パチ物呼ばわりされる恐れすらあります。
実際に、以前の記事に寄せられたmicrobri氏(知る人ぞ知るミクロマン・マイクロノーツ界のオーソリティー!)のコメントによると、「90年代のタカラはマイクロノーツの商標権を獲得するための法廷闘争を何度かアメリカで行っていた」という記録があるのだそうです。
海外市場への進出は、長年の親分であったハズブロと市場で対決する覚悟すら必要な選択でもあり、まさに会社の運命を左右する大バクチでしたが、どうやらパテントの獲得には見事失敗。「ニュー・マイクロノーツ計画」は幻となりました。
相当煮詰まったところまで進められていた玩具の製作も結局ハシゴを外された形で宙に浮いてしまったわけですが、結局「新しいマイクロノーツ玩具」は、日本で「新しいミクロマン玩具」として陽の目を見たんじゃないか。というのが私の推論です。
もしこういった事情があったなら、「マイクロノーツ」は海外では有名なタイトルであり、「ミクロマン」はタカラを代表する看板玩具であるのにも関わらず、昔も今も一向に「タカラのマイクロノーツ玩具」が出ない理由にも、マグネパワーズ、ミクロフォース以降のミクロマン玩具の海外進出が一切無かった理由にも、キチンとした説明が出来てしまうんじゃぁないでしょうか。
(但しマグネパワーズのアニメと玩具は、海外では韓国でだけ、一部正式に導入されました)
もし万が一、この仮説の全部、または一部が事実だったとしても、非常に多くの法的にデリケートな問題や会社の守秘義務に関わる事項が含まれていると思いますので、くれぐれもタカラトミーに電凸したり当時の関係者にウラを取るような事は絶対しないでいただきたいと思います。あくまでも私個人の勝手な妄想です。
まぁ、事の真偽はともかくとして、マグネパワーズが類を見ない傑作玩具群となり、アーサーら5人が新しいファンを獲得して日本でのミクロマン人気を復活させ、大いに盛り上げた事には、何の変わりもありません。
続きましてビークルとの同梱玩具で構成される、カ行5人。
右からカーク、キース、クラーク、ケイン、コナン。
色がコーラ、ファンタ、ラムネ等のクール・エイド(清涼飲料水)に見えてしょうがないです。
性格設定に関しては玩具付属設定やコミックボンボンの誌面でチョイと触れられる程度。アニメはもちろんマンガにすら出て来やしねぇ!地球には来ていたが別の地域で活躍していた。という事にされていたようです。ビーストウォーズのメディア未登場軍団みたいですなぁ・・・
・カーク
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(名前モチーフの記載はwikiにありません)スパイヘリ付属。
いつもニコニコしている無口な奴。
名前の元ネタは恐らくSF映画「スター・トレック」の主人公、カーク船長だと思われるんですが、スタトレキャラクターは別の会社が玩具として販売している都合上、版権関係のトラブルが発生しないよう、wikiでは触れられなかったのかもしれません。
顔は「機動警察パトレイバー」のイングラム風。
・キース
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(ローリングストーンズのキース・リチャーズから)ビートローダー付属。
他人のサポートに徹する引っ込み思案な性格。
顔はウルトラマン風。
・クラーク
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(札幌農学校のクラーク博士から)ステルスヘリ付属。
後方霍乱を担当するベテラン戦士。
設定ではヒゲ面らしいです。
・ケイン
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(俳優ケイン・コスギから)ソニックバイク付属。
クラークのパートナーを勤める若手戦士。正面攻撃を得意とする。
やけにでかい頭が特徴的。つっかえるのでロボットマンには乗れません。
・コナン
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(ミステリー作家コナン・ドイルから)ミクロステーションの基地司令官を務め、規律に厳しく強い精神を持つ。優れたエンジニアとしての技術力と、優秀な戦闘指揮官の才能を持つ機動部隊の隊長。
ミクロマンコナンの「ナン」を消す奴は死刑とされている。ミクロマンコナン。
やめろと言ってるだろうこのファック野郎!
カ行連中は無口だの引っ込み思案だの規律に厳しいだの、実に地味。
アーメットのデザインに関してはどうも元ネタというか、その意味する所というのを掴みかねていたんですけど、ミクロマン研究の師匠であるooku氏より、「カ行のデザインはア行メンバーのボツ案(準備稿)じゃないかと思うんですよね~」という意見を頂きました。
確かにそう考えるといろいろシックリ来ます。
ooku氏曰く、アーサーは最初フルフェイスで作られていたという話もあり、カークの両側のアンテナはアーサーの特徴に近いし、キースの剣道面っぽいマスクは剣士イザムではないかとの事。
ケインのデカ頭は天才エジソン。
コナンの老け顔は重鎮オーディーン。
そんな風に考えると相当納得が行く説明だと思います。
結局イザムとエジソンの決定デザインには、なぜか消滅したはずのマイクロノーツの記号が導入されているのですが、これはタカラによるマイクロノーツ展開が消滅した後でも、玩具のデザインに暗号化されたマイクロノーツ・オマージュを埋め込む事で、マイクロノーツの世界もタカラSFランドの中にこっそりとマージしてしまおう。という、制作サイドのささやかな反抗、または「遊び」が行われていたんじゃないか。と、私は思うのであります。
マグネパワーズ玩具には「交換可能な世界」という、マイクロノーツの基本姿勢が随所に流れています。
メディアでガチガチにキャラを固めて性格設計されたア行の5人は「従来に無かったミクロマンの遊び方」を新たに提示しましたが、カ行の5人は少ない情報で自由に遊ぶ「昔と変わらないミクロマンの遊び方」を担保しているようにも思われます。
そう考えると、「カ行の5人」こそが、昭和のミクロマンやマイクロノーツの玩具に近い存在と言えます。
ア行の5人とカ行の5人で合わせて10人。最後となる「11人目の男」、サイバーを加えて11人。
ニューミクロマンの続編であり、リメイクの側面を持つマグネパワーズは、ミクロマン、マイクロノーツ、ニューミクロマン前期までが9年がかりで積み上げてきた足跡を、1998年の年末から1999年7月までの約一年弱で一気に駆け抜けた、とんでもない玩具シリーズでした。
多くのファンがそのあまりに目まぐるしいスピードや、送り手の過剰なパワーに付いて行けなかった事もまた、当時の一面の事実です。
新シリーズ、レッドパワーズはマイクロノーツの呪縛から開放され、ミクロマンと変形ロボットが本格的に絡む、より日本的な、ファンが本当に求めていた平成ミクロマンとなる、「はず」。でした。
以降、後編に続きます。