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爆闘宣言ダイガンダー 「クローバーメタル・リブート」

地上より:お詫び、そして訂正

さてワタクシ、前回の記事では「ダイガンダーはタカラのガンダムだったらしい」などという、大妄言を言い出す始末でありました。前回記事(「暗闘宣言!ガンダ○大地に立つ!!」

我ながらさすがにトンデモの度が過ぎたと感じており、反省を致す事しきりであります。ですので、今回は世間様に対しましてイカサマな言説を流布してしまった事を深く反省し、その責任を取る意味を込めまして、腹を切る!!
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…訳にも行かないので、代わりとして前回のステートメントを少々修正し、この度私はこのような結論に至ったことをお知らせいたします。

「ダイガンダーはガンダムです」

毒を食らわば沙羅曼蛇。記事公開後、さらに玩具やアニメの調査、分析を進めた結果、反省どころかますます確信は深まってしまった次第であります押忍。反省の色無し!

謎めいた記号の数々に導かれたその先、玩具沼の最深部に隠されていた物は超巨大な核弾頭付きの不発弾でした。

※今回の記事はあくまでも管理人NORによる妄想でありタワゴトでありますので、そこのところを充分にご理解頂ければと思います。

地下第一層:爆闘宣言唱歌

ダイガンダーの中身を覚えて無い人でも、この歌だけは忘れようが無いでしょう。
歌い出しの部分に注目して頂きたいのですが

ダイガンダーOP

歌詞は「ダイガンダー 燃えろ 燃え上がれ」ですね。では次に、こっちを聞いてみて頂きたい。

翔べ!ガンダム!

歌い出しは「燃え上がれ 燃え上がれ 燃え上がれ ガンダム」です。どっちも開幕からガンダが燃え上がっております。なんとガンダムの方が一回多く燃えてますよ。

ダイガンダー自体が「昔のアニメのノリ」に回帰するような路線でしたから、よくあるフレーズが偶然カブッたんじゃねぇのか?という意見もあるでしょうが、この歌の中にはまだネタが仕込まれています。

イヤでも耳に残る「ダイ ダイ ダイ ダイ ダイガンダー」の連呼ですが、こちらも聴いてみて頂きたい。

行け!ザンボット3

こっちも相当なモンです。

ダイガンのサビでは「輝け鋼鉄の」というフレーズが続きますが、「輝」という言葉はダイターン3の主題歌のサビで「日輪の輝きを」、「輝く銀河を」と二回も使われている、非常に印象深い言葉でもあります。

カムヒア!ダイターン3

「鋼」という言葉も、ダイターンの冠タイトル、「無敵鋼人」を思わせます。

○ダイダイダイダイ
(ザザンザーザザン)→無敵超人ザンボット3
○ダイガンダー燃えろ燃え上がれ
(燃え上がれガンダム)→機動戦士ガンダム
○輝け鋼鉄の
(日輪の輝きを・輝く銀河を)→無敵鋼人ダイターン3

サビのフレーズで、ザンボット、ガンダム、ダイターンの主題歌を連続オマージュ。これらはもちろん偶然のシンクロニティという可能性もありますが、ここまで材料が揃うと、寄せている可能性もさすがに排除できません。

さらにダイガンダーの歌詞には「心の目を開け」というフレーズもありますが、タカラ・サンライズによる栄えある勇者シリーズ第一弾、「勇者エクスカイザー」のOPには「目」に関わる歌詞が2箇所もあります。

「今を見つめるその瞳は fire soul」
「本当の宝を誰も探そうとしない everyday 目を覚ませ」

心の目が開かないと、本当のタカラは見つけられない」というわけです。怖すぎます。オレが。

しかしこの歌には無敵シリーズ第三弾となる「無敵ロボ トライダーG7」の要素が見受けられません。
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トライダーは玩具セールス面では失敗だったガンダムを反省して痛快娯楽作品となり、おもちゃのセールスも良好。以後のタカラの考える「子供向けロボットアニメの理想象」となる重要な作品であり、タカラ・サンライズ・大河原メカの三点セットで展開される、後の勇者スタイルの原型となりました。

歌にトライダーの代わりとしてエクスカイザーの要素が加えられたのは無敵・勇者を一本の線として繋ぐという意図によるのかもしれません。

さすがにやりすぎ感も感じますが、ダイガンダーの主題歌は「ダイガンダーというプロダクトの目指していた先」を最も良く指し示す、文字通りに主題が含まれているのです。

地下第二層:光って燃える宇宙の暁に消ゆ

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画像は海外のwikiから。ん~、ダイガンもこうして見るとすごいカッコいいじゃんかよ。

次に、各キャラクターの名前について探ってゆきます。「ダイガンダー」という名前からして、後半はガンダムの没名称、「X-78ガンダー」から。そして前半の「ダイ」はクローバー・サンライズ時代に「ダイターン」、「ダイオージャ」と、良く使われていたネーミングパーツです。

アニメの主人公「曙アキラ」。
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名前の元ネタは一見昭和ミクロマンの「片貝あきら」っぽいのですが、2000年より角川・富士見書房が展開していたメディアミックス作品、「無敵王トライゼノン」から、宇宙戦艦「曙」と、主人公「神威章(かむい あきら)」の名前を合成した可能性もあります。

なぜタカラもサンライズも全く関わっていないトライゼノンからネタを引っ張ったのか、裏の事情や担当作家の関与については全くの不明ですが、トライゼノンのストーリーが「宇宙から飛来した遺跡(戦艦とロボット)を日本各地で密かに継承する一族の物語」であり、まんまザンボット3のリメイクとなっている事は指摘しておきます。

「曙」も「アキラ(前田日明?)」も、ダイターン3のパワーの根源、「太陽(日輪)」に関わる言葉です。トライゼノンとダイガンダーがどちらも「無敵シリーズ」をオマージュしていたのなら、意図はともかくとして似てしまった事は当然なのかもしれません。


アキラのじいちゃん、「ハジメ博士」
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アキラの祖父で、ある意味最もキャラが立っている名物じいさん。元祖バトロボとなる「ドラゴバースト」をダイクーン教授とともに開発したバトロボの父。これはもう、完全に私の想像ですが(他の推理も全部そうっちゃあそうですが)、サンライズ原作者、矢立(やたて はじめ)からではないかなと。

矢立肇とは個人の名義ではなく、サンライズ企画部、企画チームの覆面名義です。東映特撮ドラマの原作者、八手三郎(はって さぶろう)も同様に有名ですね。初代ガンダムの製作時にはクローバー(タカラ)が提案した様々なオーダーが作品に反映されていた事を考えると、「初代ガンダムの矢立肇」の中にはタカラの社員が加わっていた。とも言えます。うわぁ、とうとう書いちまったよ!ついに私も指名手配犯です。

ついでに、ハジメ博士がアキラの父方の祖父だったとするとフルネームでは「曙ハジメ」となります。「曙」を英語にすると「サンライズ」です。


アキラチームのマネージャー、「星ハルカ」
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ハルカの名前の元ネタ探しは今も非常~に悩んでます。関連しそうな他作品も徹底リサーチをすれば何かが出てくるのかもしれませんが、なにせヤマト、スターウォーズブーム以降の日本アニメは宇宙を題材にしたSFばっかりなので、「似てる」と疑ってしまえば何にでも似てしまいます。

「ザンボット3」のエンディング歌詞の「もう帰る事無い 宇宙の星よ」かとも思いましたがムリヤリ感が否めません。「はるかな星がふるさと」なのはウルトラセブンですねぇ。テレビ版ガンダムEDの、「宇宙の かなたに 輝く星は」あたりかなりクサい気もしますし、勇者ではエクスカイザーの主人公一家が「星川」姓なのも気になりますが、どれも決め手に欠けます。


後半展開の主軸となる悪の科学者、プロフェッサー・ビッグバン。
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彼の本名はダイクーン。こちらはもう、隠す気が微塵もありません(赤い人のオヤジ)。彼はかつて、主人公アキラのじいちゃんであるハジメ博士と共に、人類の未来のためにクラスター・システムの開発を行う科学者でしたが、ある事件をきっかけとしてバトロボ社会を憎む悪の思想に染まってしまいます。

「ビッグバン」は宇宙創造に関わる言葉ですが、これも「ダイターン3」の主人公である波嵐万丈の父、悪のサイボーグメガノイドを作り出した科学者、波嵐創造から取っているのでしょう。ビッグバンのキャラクター造形は他にも様々な「仕込み」が入っていまして、彼を中心として作品を解釈するとまた全然別の物語が開示されて行くのですが、それはまた別の機会に。

さて、各キャラクター名のネーミング周りには、全体的にダイターン3の記号要素が強く感じられます。決してガンダム中心ではない。という点は非常に重要に思われ、造り手の「意図」を感じさせます。

いろいろと推測で書きましたが、確実に言える事は、アキラとハルカの名前が「太陽(日輪)」と「星(宇宙・銀河)」の対を成し、ビッグバンとハジメ博士は「創造(始まり)」を現わしているという事です。これらの記号を素直に読み取ると、「ビッグバン、事象の始め、宇宙の誕生」という、宇宙創造の一連の配置が浮かび上がります。表面上、アニメの主人公は現在の時勢を示す二人の子供、「太陽」と「星」なのですが、ダイガンダーの構成をタカラSFランドに普遍的に見られる特徴、「過去への逆進性」に当てはめると、着目されるべきは二人のジジイとなります。

アニメの裏テーマは「二人の創造者の対立」です。ここ深いですよ。

地下第三層:アブソリュート・スリー

それではオモチャの要素を再度検証してみましょう。

前回ガンダムとダイガンダーの顔の類似について指摘をしましたが、さらに良く検証をしてみると、ダイガンダーの顔はクローバーガンダムに寄せている事がわかります。
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画像素材提供:きゃの十三氏

クローバー版は額のV字ラインが黄色で、アゴの赤い突起が長く、口まで伸びており、顔の中央ラインは「鼻」のようになっているのがポイントです。
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ダイガンダーの可動箇所、というかポージングの感覚は、ほぼクローバーDXガンダムと一緒です。
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そんなとこまで寄せるか!?とも思いますけど、肩のキャノン、各所のオモチャ臭さを漂わすキランキランのメッキ使いもクロガン風。

腕にどうぶつロボットを武器として装着するギミックは、一見先行してヒットしていたバンダイのジュウレンジャーみたいではありますが、クローバー・バリエーションダイカストの「手の甲に装着する武器」のようでもあります。
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ダイガンダーとサポートロボのブライオン(青)、ボーンレックス(赤)。
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ギラギラしたメッキ、主役が白でお供が赤と青のカラーレイアウトは、クローバー時代のガンダム、ガンキャノン、ガンタンクを思わせます。

三機はコアブロックシステムによる換装も可能な、平成の「バリエーション合体3」と言えます。
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プロフェッサー・ビッグバン配下のギンザンチーム。敵か味方か謎のガンマン ギンザン(馬)、機動大盗賊 タイガマル(虎)、機動忍法帳 ロウガマル(狼)
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ガンダム、ガンタンク、ガンキャノンが揃い、次に来たのが馬モチーフ。これはもう木馬しか有り得ません。

ギンザンはガンマンモチーフという事で、カカトにはカウボーイのブーツに付く「拍車」が付いています。
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馬が自分に拍車を付けてどうする。という気が激しくするのですが、他のロボにもトリのくせに猟師(ウィリアム・テル)を名乗るロボもいるので、ダイガンダー的にはこれでオッケーなのでしょう。

と、思わず納得してしまうのもミスリード。ガンダムの前タイトル「機動鋼人ガンボーイ」では、主役機のデザインにはガンマンの意匠が取り入れられており、足に「拍車」が付いています。
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ギンザンチーム三体の二つ名を組み合わせると、おっそろしい事に「機動●●ガン●●」となります。

ダイガンダーとGファイター伝説の暗黒獣ドラゴバーストが合体!
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勇者シリーズで培われた二号ロボとのグレート合体!これはまさしく勇者の血統!!

ここまで書いたらもうさすがにご理解頂けたのではないでしょうか。

ダイガンダープロジェクトの正体は「ガンダム」や「無敵シリーズ」も含めたクローバー期の合金ロボット玩具をタカラ玩具史へと再配置する、秘密計画なのです。

地下第四層:クローバーメタル・リブート

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※画像素材提供:バルチャー楠木氏、きゃの十三氏、平成生まれ昭和キッズ氏
ししし、しまった!定冠詞の位置、間違えてるわ(汗)←直せよ

かつてガンダムのスポンサーだったクローバーの男児玩具が実はタカラ製であり、ガンダムの企画はサンライズとタカラによって進めらていた。というのは、公式な発信こそ無いもののほぼ確定と言っても構わないでしょう。
ガンダムの企画に関して、タカラが実務を仕切っていたという記事。

当時のタカラ開発室スタッフ(ミクロマンチーム)の回想。「タカラがクローバーからガンダムの製作を請け負っていた」事が、当時のタカラ社員により証言されている貴重な資料。

ウィキペディア:無敵超人ザンボット3

※なぜかザンボット3のwikiには、「ザンボット・ダイターンの開発がダイアクロンに繋がった」事が「玩具開発の沼本」の証言として記述されています。沼本氏はもちろんタカラ社員なのに、wiki文中にはタカラのタも出てこなければ、当然関連が予想されるガンダム玩具の開発に関しても一切記述が無く、非常に不自然な文章となっています。もちろんガンダムのwikiには沼本氏についてもタカラについても一カケラの言及もありません。ソースは五十嵐浩司氏著作の「ガンプラ・ジェネレーション」との事なので、そちらには「編集されなかった詳細」が堂々と記述されているのかもしれません。

「タカラDXロボ」の系譜は、ロボットマンの電動ロボにクローバー合金が合流した後、DX勇者(グレート合体)、DX鉄人(超電導)、DXグリッドマンらを経て、DXウェブナイト・DXバトロボ(プラグイット)へと到達します。

この系譜はトランスフォーマーでもなければ、サイボーグ、ミクロマン、ダイアクロンといった「タカラSFランド」でもなく、アニメや特撮番組と連動した版権モノが中心であるため、ファンから長く傍流の扱いを受けてきた感は否めません。

しかし、「ミクロマン、ダイアクロンの玩具が転用されてトランスフォーマーになった」というのがこれまでのタカラ玩具発展史の定説ですが、そもそもそれ以前、変形(ダイターン)、合体(ザンボット)、組み換え換装・アーマー強化(ガンダム)といったチャレンジを積み重ねた「クローバー合金期」こそが、後のタカラロボット玩具の基礎を築いた重要な時期だったのです。

トランスフォーマーはミクロマンやダイアクロンのロボットの転用。しかし、ミクロロボット・ダイアクロンロボットの基礎はクローバー合金。

この歴史は永遠に教科書にも載らなければ試験にも出ませんし、自慢げに話すと恐らく高確率で冷ややかな目で見られる危険な知識ですが、こっそりと心の奥底には留めておいて頂きたいと思います。

さて、時代は変わって2001年、21世紀開始の年。

マーケットは少子化により縮小の一方。ヒーローキャラクター分野は仮面ライダー、スーパー戦隊が強固なシェアを占め、内外では競技系玩具とカードゲームが大流行。意欲作だったウェブダイバーはセールス的に不発で、海外市場への独自流通網は相変わらず思い通りに立ち行かない。と、この頃タカラのアニメロボット路線は岐路に立たされていました。ぶっちゃけて言うと大赤字です。

ダイガンダープロジェクトの開始時には、(成果が出なければ)オリジナルロボはこれで最後。という決定を下されていたのかもしれません。実際、ダイガンダーは歴史ある純タカラアニメロボット展開の最後の作品となりました。

ダイガンダーがなぜこの時期にクローバー合金に回帰したのか。いや、してしまったのか。当時のタカラヒーロー玩具チームの想い、悲壮な決意のようなものが、なんとなく見えてくるような気がします。

地下帯水層:水蛭子の影

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「最初のガンダムをサンライズと共に作ったのはタカラ」という衝撃的なトピックが、今までバンダイ側からはもちろん、タカラ側からすらも出てこなかったというのは、当時を知らない人にしてみると不可解かもしれません。

しかし当時から現在までの状況を読み取ると、クローバーガンダムはバンダイとタカラの双方にとって都合が悪い、複雑な存在となっているのでしょう。

※以下、「純粋な玩具ファン」の方には不愉快に感じられるかもしれない記述が続きます。それなりの覚悟をされて読まれるか、いっそ読まない事をお勧めします。

バンダイにしてみれば「最初のガンダム」というのは劇場版三部作しかなく、クローバーが参加して作ったテレビ版などは知ったこっちゃないというのが本音です。

バンダイがテレビ版を無視してるだなんて、そんな事あるのか?と思われるでしょうが、自称業界関係者(かつてサンライズ・バンダイ間のコンタクトを仲介された方ですとか)はツイッターで「ガンダムはクローバーのチャチな玩具を捨ててバンダイの精巧なプラモを得たおかげで大成功した」などと喧伝していました。こういった考え方は一般にも意外と浸透しています。

カプコンの大ヒットゲーム、「連邦vsジオン」は、長く封印され続けた「テレビ版ガンダム」を扱うゲームでした。


バンナムの副社長は初めてこれを見た時、「これがガンダムかよ」と違和感を感じたとの事です。(書籍:大人のガンダム)

当初バンダイは連ジを許諾せず、稀代の傑作ガンダムゲームはガチでオクラ寸前にまで追い込まれました。バンダイとしてはテレビ版の功績に注目が集るのはマズい。自分たちが作ったガンダム神話、いや、ガンプラ神話に傷が付きます。ガンダムを成功に導いたのは「過去のアニメ製作チーム」ではなく、「ガンプラ」でなくてはいけないのです。

テレビ版と劇場版の差異は俗に言う「正史問題」となり、バンダイは「自分たちのコントロールが及ぶ、新しい初代ガンダム」を欲します。「やべーよな古事記。やっぱ日本書紀編纂しようゼ!ザ☆オリジネージ!」ってことです。

さて、一方タカラはというと、アニメ史に残る傑作の創造に関わったのに、その功績が全く認められておらず、世間に発信される事も無い。というのは、当時を知らない人にとっては疑問に感じるでしょう。

※「信頼性のある発信がされていない以上、そんな事実は存在しない」と思う人は、そう思っていて下さって結構です。

しかし昔のアニメファンにとってはアニメ製作者が正義でオモチャ会社は悪。これは当時の常識です。

「敵のロボットをたくさん出して子供の興味を引け」、「話が暗すぎるからもっと明るくしろ」、「合体メカを出せ」、「オモチャが売れていないから、もうこの作品は打ち切りだ」など、スポンサーからの要求が作品に浴びせられていた。という話は、昔のファンはアニメ雑誌やムック本のインタビュー記事等を通して、皆知っていました。そんな情勢下で「ガンダムの製作に口出しをしていたのが実際はタカラ」なんていう事が世間に知られると、傑作を汚した戦犯の汚名を一手に被ってしまいます。

ガンダム本放送中のアニメージュ 79年8月号

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巻頭ガンダム特集では、「左遷されていたシャアが復帰する」という、当時の腐女子が待ちに待っていたトピックが公開されています。

実はシャアの左遷がスポンサーからの指令だった事、最初は左遷ではなく、殺して欲しいというオーダーだった事が当時のファンに知れたりすれば、今ならそれこそ炎上、不買運動モノの大騒ぎになったと思われます(女子高生がクローバーのオモチャを不買した所で何の損害も無いでしょうが)。

ましてや、ダグラム以降に新たな重要ターゲットとして捉えていた「アニメファン」からの不興をこのタイミングで買うわけにはゆきません。タカラにしても、クローバーに泥を被っていてもらう方が都合が良かったという事もできます。

タカラとバンダイにとってクローバーガンダムとは、いわばイザナミ、イザナギの国造りの際に最初に産まれてしまった謎の神、水蛭子のような存在なのです。

地下最深部:沼の奥底に至り、海を見る

さて、「玩具開発の沼本」という名前が登場しました。様々な資料の断片から判断するに、沼本氏が当時の「ガンダムの中の人」の一人だった事に、疑いはありません。ついにタカラ玩具沼の最深部に潜む、「主」の影を捉えました。

この方はほとんどメディアには登場せず、一般的な玩具ファンやアニメファンへの知名度は皆無に等しいのですが、日本のアニメと玩具に残した影の功績は、我々シロートの想像を遥かに超えて巨大です。

沼本氏は虫プロ養成所の教官時代には安彦良和氏、荒木伸吾氏らの師匠でした。サンライズの前身となる創映社の立ち上げメンバーとなり、「ゼロテスター」のデザインでは当時無名のスタジオぬえをアニメ・玩具界に初起用。タカラ転職後は「鋼鉄ジーグ」等のタカラ・東映路線、「ダイターン3」、「ザンボット3」、「ガンダム」等のクローバー・日本サンライズ路線、「ダグラム」、「ボトムズ」等のタカラ・サンライズ路線において、玩具開発とアニメ展開を合わせて取り仕切っていたという、タカラアニメランドの核心であったと言って良い、控え目に言って大魔王のような人です。

非常に貴重な動く沼本氏のお姿。(PC-FX アニメフリーク Vol.6)

高橋監督に「命令」のできる「虫プロの先輩」?一体誰???

沼本氏はガンダムの本放送終了後、劇場版公開に向けてますます高まるガンダム人気には何一つ未練を残さず、電撃的なスピードで次の戦略を走らせます。右肩を血の色に塗った沼本部隊(←右肩嘘)は、クローバーでトライダーを子供層にヒットさせ、自社初のプラモデル展開ではダグラムを「アニメプラモブーム」に間に合わせ、大ヒットシリーズとなりました。

この時の拡大戦略は後に合金ロボット路線からダイアクロンや勇者シリーズが、プラモデル路線からワタルやビーダマンといったプラクションシリーズが、両者の中間、「プラモ時代の超合金」としてデュアルモデルが産み出され、子供層と青少年層を幅広くカバーする、タカラ基幹戦略が確立されます。

タカラはガンダムで「しくじった」際、ガンダム人気に固執するのではなく、ガンダムが成功した理由を短期間の内に徹底研究して筋力を鍛え、充分「モトを取った」と言えます。むしろ自分の子であるガンダムと完全に決別し、討ち取るための戦いを続ける事によって、自社のアイデンティティを確立させて来た。と、言えるのかもしれません。

地下海岸線:我、地下百尺の捨石と成らん

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脇道ついでにさらに脱線します。

ガンダムへの「オモチャ屋の口出し」は、当時本当に悪い結果しか残さなかったのでしょうか?

当時「掟破りの塊り」と言われたブッ飛び過ぎの第一話に付いてゆけなかった私は、初めてグフやドムが登場した頃にガンダムのメカがようやく「カッコ良く」見え始めました。ホバーで迫る黒い三連星の高機動戦法、トゲ鉄球を素手キャッチするゴッグのド迫力、カッコいいシャアが搭乗するのに見た目カッパで完全ギャグの赤ズゴック、登場即串刺しのジムのクッソ弱さ、スレッガーの特攻、ツラで戦うジオングなどなど、忘れられない名シーンの数々は、かつて無かったインパクトを持って私の目に焼き付いています。

私はいつのまにかテレビのガンダムが大好きになっていました。クリスマスのスーパーのチラシに、当時の子供たちのアコガレNo.1だったゲームウォッチや電子ゲームの数々と並んで写されていたDX合体セットはキラキラと輝いて見え、映画のコアブースターにはなんじゃそりゃ!と憤慨しました。

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画像出展:サドル横町77

本放送当時、再放送のウルトラブームに首まで浸かる小学生だった私が「つまんねーなガンダム!」と思っていた部分はこうした「テコ入れ」の数々によって劇的に面白くなって行った事は間違いがありません。「スポンサーからの口出し」は場当たり的に付けられた思い付きの難癖ではなく、恐らく対象層とする子供たちへの、綿密なリサーチ、分析を行った結果ではないかと思います。

スポンサーサイドは極めてマジメに「口出し」をし、アニメスタッフはクソッたれ!と反発しながらも「制約に対する反抗」をバネに才能を開花させ、「意識高いが面白くない作品」になるはずだったガンダムを、「意識高くて強烈な娯楽性も含んだ作品」へと昇華させて行ったのだと思います。

「アニメの世界観を全く理解していないクソ玩具」という評価が昔から定着していたクローバーガンダムですが、これはもともと準備稿の「大河原版ガンダム」の設定画に基づいた仕様なのです。
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誰もがよく知る「アニメのガンダム」は、大河原版の後に描き直された「安彦版ガンダム」なのでした。そもそもクローバー・タカラはガンダムの第一話があんな事になってしまうなんて、ちっとも知らされていないまま第一回放送を迎えたのです。「作品世界を理解していないダッセー玩具を出してコケた」という、いわゆるクローバー伝説はミスリードで、スポンサーサイドにしてみれば「裏で周到な準備を行っていたアニメスタッフにダマされた」というのが実際です。

私が最も尊敬するクリエイターである仙波隆綱氏のこの言葉が、私は大好きです。

「世に出た商品にクソは無い」

どんなにダメに見える作品、商品でも、世に出るまでは様々な人達が関わり、高いハードルを越え、ダメに見える部分にも「そうなってしまった理由」を持って世に出ている。という教えです。

何が言いたいのかというと、クローバーガンダムはただの「古臭くて特別ダサいおもちゃ」かもしれませんが(当時からそう見られていましたし、私も思ってました)、歴史の必然によって誕生し、後世に遺した功績も何ら「ガンプラ」に劣る事は無いのです。

再び地上:不発弾、起爆・・・せず

ダイガンダーはロボット玩具の暗黒神、クローバーガンダムだった。では、なぜ?

これは執筆中も最後の最後まで謎でした。

なぜ「玩具史最大の禁忌」の扉が開いてしまったのか。そこに込められた思いは「アノ会社」への呪いか、祟りか、それとも手の込んだイチビリか。なんだかモヤモヤした気分を抱えたながらも、私は不発弾を起爆させて爆散する覚悟を決め、一度この記事を書き終えました。

しかしどうも、机に上に出しっぱなしの「となりの爆闘王」(とな爆)の目付きが良くありません。
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なんか、そうじゃない。と言われているようです。オモチャはもっと素直に受け容れろ。とも。←完全に頭おかしい人です

こんだけのブッ飛びを散々見せられた後にそんな事言われてもな~、と思いながらも、もう一度、この作品の「主題」に立ち戻ってみます。

 戦うべきライバルは くじけそうなこの自分

主題歌の中には80年代のアニメには必ずと言っていいほど盛り込まれていた、「侵略者」への言及がありません、乗り越えるべきは「自分」。ダイガンダーは「自身の内面」と対決しているのでしょうか?

そして積み残していた疑問点、ダイガンダーの「色」について、再度の検証を行うと、ようやく理解ができたような気がします。

ダイガンダーの白と赤、ガンダーモードのハコ感。よくよく見たら、これファミコンです。
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※そもそもプラグイットシリーズに内蔵されたXaviXテクノロジーは、ファミコンやスーパーファミコンの開発者達が作ったシステムです。

80年代、子供たちを夢中にさせた、プロレス、プラモデル、マンガ、マイコンの時代がありました。ゲーム機とおもちゃ、まんがとアニメの区別がまだ曖昧で、どれも「子供のもの」だったあの頃。電子ゲームやファミコンに熱狂し、ガンプラを作り、タイガーマスクの四次元殺法に目を見張ったあの頃。ガンプラもファミコンも、当時確かに「タカラ玩具最凶の敵」でしたが、それはともかくとして、全てあの頃輝いていた「子供たちの憧れ」なのです。

当時"PPMM"と呼ばれた輝ける80年代の記憶は、バトロボマッチ、クローバーガンダム、アニメ展開、プラグイットとして、ダイガンダーの中に全て受け継がれています。

ダイガンダーとは「タカラ玩具の正統性」を恨めしげ主張するものでは無く、闘うヒーロー、ホビー、ゲーム、コンピューター、全てがキラキラと輝いていた80年代の熱気を「新世紀の子供たち」に伝えようとした、最高のオモチャだったのです。

追伸:新世紀救世主伝説

ダイガンダーの最終セールスは10億の計画に対して35%の達成で終了しました。これはもうお話しにならない結果です。セコンドからタオルを投入されての、文句の付けようが無い敗北です。終了宣告ダイザンパイです。

ダイガンダーは予定よりも前倒して終了され、トランスフォーマー・マイクロン伝説へとバトンを渡します。ダイガンダーの敗北は鋼鉄の勇気となり、伝説の勇者へと確かに受け継がれました。


昨日よりも進化して、強くなれ。

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ダイガンダーの放った「信念の一発」。タカラの本当の最終戦争は、ここより始まります。

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